司書 レファレンス

インターネット環境下でのレファレンスサービス

インターネット普及以前のレファレンス・サービスと同じ質問、「マイヤーの本が見たい」と図書館利用者から尋ねられた際に、インターネット上で書誌データベースが利用できる現在の環境において回答するケースを説明したいと思います。

 

現在インターネット上で利用できる書誌データベースは、情報学研究所の「Webcat」と国立国会図書館の「Web-OPAC」です。

 

Webcatは業務用で有料だった情報学研究所の総合目録データベースがインターネット上で公開され、しかも無料で利用できます。Web-OPACは国立国会図書館が1948年以降所蔵された和書のデータベースをインターネット上に公開したものであり、もちろん無料、洋書も網羅されています。

 

洋書の検索は原綴が鍵になる

 

Web-OPACを利用して、著者名のヘルマン・マイヤーで検索をすると「リルケと造型芸術」と「水ガラス」の2件が見つかった。「水ガラス」は1950年に出版された工学書なので同姓同名、別人のヘルマン・マイヤーである。さらに著者名の原綴であるHerman Meyerで検索すると2件ヒットし、「リルケと造型芸術」以外にもヘルマン・メイエル「物語芸術における引用句-ヨーロッパ小説の歴史と詩学」が見つかった。

 

これはデータに原書名がるので、利用者から求められている本のドイツ語(原書)からの日本語訳であることが分かり、前回の検索のあとに刊行されたものであると予測できる。それにしてもマイヤーは英語における発音でドイツ語では"メイエル"だとは驚きだ。

 

名前以外にも地名などは、現地読みと英語読みで異なるケースが多いので気をつけていますが、今回のMayerでは全く考えておらず、検索する際にはこういったことにも注意を払う必要がある。

 

「洋書の検索は原綴が鍵になる」というのはこういったことであり、外国人名は原綴が分かっていれば、マイヤーとメイエルといった発音の違いで、誤った検索をしてしまうミスは防ぐことができる。

 

「西洋の小説における引用の詩学」の問題は解決

 

しかし利用者の希望であった英訳は見つからなかったので、WebcatでHerman Mayerの検索をすると53件が見つかり、「リルケと造型芸術」と「物語芸術における引用句」が見つかった。

 

そしてWeb-OPACで検索した時には見つけられなかった「西洋の小説における引用の詩学」にあたる英語の著書も2件ヒットし、さらにそれが5つの大学図書館に所蔵されていることがわかった。

 

このようにして、「西洋の小説における引用の詩学」の問題は解決し、同時にヘルマン・マイヤー「複製技術の時代における芸術作品」の日本語訳にあたる著書は出版されていなこともわかった。このことから、Herman Meyerのドイツ語の著書に「複製技術の時代における芸術作品」がないこともわかった。

 

「複製技術の時代における芸術作品」をさらに詳しく調べる

 

今度は「複製技術の時代における芸術作品」というタイトルで日本語訳された著書がないかをチェックする。Web-OPACの【タイトル全体形】で検索をすると【ヒット:0件】と表示されるが、【タイトルの中の単語】で検索すると一件見つけることができた。

 

「現代人の思想 7巻」にW・ベンヤミン著として掲載されている。こういした論文集中の一論文や短編小説集の中の1小説を見つけることは、インターネットが普及する以前は困難だったが、こうした詳細検索ができるインターネット上のデータベースが登場して、難しさは緩和された。

 

これにより前回の検索で「複製技術時代の芸術」が正しいと判断したのは間違いだった可能性が出てきた。