図書館司書 レファレンス

インターネット普及以前のレファレンス・サービスPart.2

データベースでの検索

 

探している文献が、働いている図書館にはないことが確認できたので、他の図書館にも無いか探すことにする。この業務も一昔前は決して手軽なものではなかったが、学術情報センター(現在は、国立情報学研究所)があるおかげで、図書館同士で共有できるコンピュータ目録のシステムが開発されてとても便利になった。

 

これは各図書館が目録データをネットワークを通じて入力することで成り立っているシステムで、オンラインのデータベースの総合目録が作成される仕組みだ。

 

このシステムの導入により検索自体はとても簡単にはなったが、古い本はそれほど入力されていないので注意をする必要がある。見つからない可能性も大いにあるのだ。

 

まずこのオンライン・データベースを利用して、日本語の本を多数収録してある和図書の総合目録を検索してみたがヘルマン・マイヤーの本はなかった。次に日本語以外の本が収録された洋図書の総合目録をチェックしたら、著者がHerman Meyerの本が19冊見つかった。

 

さっそくリストをプリントアウトして、詳しく情報を見ていく。ドイツ語と英語の文献が確認できたが、英語の文献はすべて数学に関連した内容であった。また書名から推測する限りドイツ語の文献は文学に関するもので、Herman Meyerには文学と数学の分野に同姓同名がいることがわかった。

 

学術情報センターで検索してもダメなら・・・

 

ドイツ語の本には「西欧の小説における引用の詩学」はメインタイトルではなかったが、サブタイトルで一致するものが見つかった。しかし、利用者が求めている文献はドイツ語ではなく、英語である。

 

学術情報センターの総合目録、オンライン・データベースで検索しても見つからない場合は、その前身でもある国立国会図書館の「新収洋書総合目録」を調べる必要が出てくる。これは国立国会図書館や洋書が多く所蔵されている大学図書館yや専門図書館によって作成される洋書専門の総合目録であり、1987年までは冊子体で利用されていたが、その後この目録は学術情報センターのデータベースに引き継がれていった。

 

この「新収洋書総合目録」は、カード目録をそのまま編集して掲載されているためにかなり見辛く、さらに分厚く重いので調べ辛い、というのが難点である。

 

情報を手がかりに調べていく

 

まずはこの本が出版された1968年〜1972年分まで「新収洋書総合目録」調べてみたが見つからないので、さらにもう何年か分を調べていく。

 

すると1972年に出版された"The poetics of quotation in the European novel"というMeyerの著作を見つけることができた。所蔵図書館に関しても明らかになった。

 

つまりこの本は、ドイツ語の本のサブタイトルをメインタイトルにした翻訳ものだったのだ。

 

本当に日本で出版されている?

 

利用者の依頼は、「複製技術の時代における芸術作品」に絞られた。国立国会図書館の「J-BISK」で検索をかけてみる。J-BISKとは、元々冊子体であった「日本全国書誌」のCD-ROMバージョンであり、昔は1969年以降に日本で出版された文献がほぼ網羅されているといっても過言ではない。

 

ここでは残念ながら目的の文献は発見できず、どうやら1968年以前の出版物であったと考えられる。こうなるとさらに前身、「全日本出版物総目録」を1968年から一年ずつ遡って
見ていかなければならない。

 

「全日本出版物総目録」は「新収洋書総合目録」ほどではないが、利便性は乏しい。しかし「翻訳図書目録1945/1976」が刊行されていることを思い出したので、併せて利用することにした。「翻訳図書目録1945/1976」には1945年〜1976年までに出版された翻訳図書が網羅的に掲載されている。

 

この部分が網羅されることにより(これなまでは1977年〜1988年の分までしかなかった)、戦後の翻訳図書も1988年まで遡って調べられるのでとても便利である。

 

だが「翻訳図書目録1945/1976」にもヘルマン・マイヤーの著作は「リルケと造型芸術」のみの収録であった。そもそもマイヤーは「新収洋書総合目録」によれば、1922年生まれなので1945年以前の太平洋戦争真っ只中でこの人物の本が日本で出版されている可能性は極めて低い。

 

果たしてこの本は、本当に日本で出版されているのか?質問の出処にもう一度当たってみる必要がありそうだ。

 

引用する際に著者名を間違えていた・・・

 

この質問の発端である山口昌男の引用は、「文芸」(1974年一月号に掲載されている高橋英夫の「引用と再現」なので、この論文を実際に見て考えていくと「複製技術の時代における芸術作品」は、先に述べたヴァルター・ベンヤミンの「複数技術時代の芸術」に該当することが見えてくる。

 

つまり山口昌男は引用する際に、間違えていたのである。これで「複製技術の時代における芸術作品」の問題も解決した。

 

今回の依頼ケースは、最初に思っていたより難しく時間も見積りの3倍程度かかってしまった。原因としては、ドイツ語の著書を英語翻訳した著書であっったこと、そして著者名が間違がっていたためだと考えられる。